claviarea 6 コンテンポラリー・ピアニズム/中村和枝のピアノ接近物語II

claviarea 6 コンテンポラリー・ピアニズム/中村和枝のピアノ接近物語II

2002年7月に行った「ピアノ接近物語」は、ピアノと客席を限りなく近づけた、特別な音楽の聴き方を提言しました。今回はその2回目です。演劇などにも使用されるデッドな会場は、余計な残響を排除して楽器のダイレクトな音--それも生々しくも美しいスタインウェイ・ピアノの音--に耳をそばだてるにはぴったりです。そもそもピアノのコンサート、それもクラシック系のコンサートでは、まず会場の残響がほどほどに用意されているホールが選ばれることが普通です。確かに教会の響きを起源とした西洋音楽の伝統を考えると、空間残響を考慮した会場の選択は決して間違いではありません。しかしこと現代音楽で考えれば、もはやそのようなコンテキストから離れた作品も珍しくありません。その中で従来の残響を伴う空間を無批判に選択するのには疑問があります。
「ピアノ接近」では、空間残響を伴わずに聴くに堪えうる音楽、いやむしろそれどころか、残響を排した方が本来の意図にかなうのではないかと思われる作品でプログラムを組みます。前回は残響を前提としている作品も意図的に組み込んで、従来の鑑賞との比較も試してみましたが、今回の作品のほとんどはピアノ自身から発生する音のみを聴くのが面白いのではないかと考えています。まずピアノ内部構造から音響と奏法の両面を開拓したカウエル作品。カウエルは現代音楽と呼ぶには古すぎますが、ピアノの聴き方をクラシックのそれから解き放った功績は非常に大きいと思われます。残念ながら最近は楽譜も絶版になりつつありますが、音響という方面から興味深く、あまり頻繁にも演奏されない三つの作品を選びました。山本作品は前回の続きで、ピアノを機械として考えた場合の「裏の音」をテーマとしています。そして前田作品は、「中村和枝の異空間情景」のために書かれた作品ですが、プログラミングの関係から結局前半しか演奏できなかったものを今回は全曲演奏します。以前聴かれたことのある方は、その後半に訪れるもう一つの世界を是非体験してみてください。
なお前回は50席用意しましたが、それではすべてのリスナーが「接近」するには多すぎると判断し、今回は35席限定で2回公演とします。

■演奏:中村和枝(ピアノ)
■企画:山本裕之(作曲家)

■場所:門仲天井ホール/東京都江東区門前仲町1-20-3-8F
■日時:2004年7月25日(日) 開演16:00/18:30(2回公演/開場はそれぞれ30前)
■入場料:1800円(予約制)

■プログラム:
ヘンリー・カウエル/タイガー
ヘンリー・カウエル/不吉な反響
山本裕之/足の起源II*
ヘンリー・カウエル/ピアノ・ピース(パリ1924)
前田克治/イン・ビトゥイーン**

*)新作初演 **)完全版初演