claviarea 10 コンテンポラリー・ピアニズム/くりかへす悦び
生演奏は1度きり。しかしそれを2度聴くことができたら、音楽の体験は変わるでしょうか。「くりかへす悦び」は、そんな素朴な好奇心をかきたてます。
本公演で用意される作品は3曲。まず前半にすべて演奏されます。そして耳を休めたあとの後半では、同じ3曲が再度演奏されます。少し前に聴いた音楽は、その音響や構造や断片が曖昧に脳裏に残っているかもしれず、そのときにはもちろん初めて聴く曲ではありません。より明確に音楽を聴き取れたり、新しい発見もあるに違いありません。もしかしたら少し違う印象を持つかも知れないし、生演奏は不定形なものなので、CDで聴き返すのとは違う時間感覚を味わえるかも知れません。同じ曲は違う音楽ーーそんなありそうで意外にない音楽体験が出来る、それが「くりかへす悦び」です。
曲はカナダのクロード・ヴィヴィエ(1948~83)がまだ20代の頃に書いた、フレーズの随所に狂気をはらむ《ピアノフォルテ》。メキシコ出身の新鋭アルトゥーロ・フエンテス(1975~)がゴヤの版画をモチーフにした《飛行の妄》は、ピアノと魅力的なサウンドトラックによる勢いのよい作品。そして近年旺盛な創作が留まることを知らない木下正道 (1969~)による委嘱作《「すべて」の執拗さのなかで、ついに再び「無」になることII》。
claviareaの新しい試みにどうぞご期待ください。